『学問の発見』広中平祐(著)
数学のノーベル賞と言われる「フィールズ賞」というものある。ただし、フィールズ賞の授与は4年に一度で、さらに対象が40歳以下ということで受賞することはノーベル賞より難しいのではないかと個人的には思う。現在までの日本人受賞者は、小平邦彦氏、広中平祐氏、森重文氏の3名である*1。 この3名のうちの1名である広中平祐氏がどのような考えを持ち、どのように数学(広くは学問)に向き合っていたのかを知るべく『学問の発見』を読んでみた。
この本では広中氏が「特異点解消」の研究を振り返って、広中氏が「ものを学ぶこと」「ものを創造すること」について知り得たことについて書かれている。この本を通じて僕が一番感じたことは、広中氏は他社が太刀打ちできない天才というよりは、とてつもない努力家であり物事を非常に深く考えられている数学者であることである*2。この事実を知り、平凡な数学者の端くれをしている僕としては「もっと研究に対して向き合い、努力しないと!」と反省した。
広中氏が述べられていることはわかりやすく、大変勉強・参考になったが、いくつか印象的だったことを以下に羅列したいと思います。
- 一般的な話
- 創造をするということが、最高の人生である。
- ものを考えることは、考えること自体に意味、価値がある。
- いいものを創造するには、上手にあきらめること、開き直ることも必要である。
- 研究の話
- ニーズではなくウォントに答えようと研究をすすめていくことで、過去に因われない「飛躍」を生み出す。
- 研究を進めるに当たって、事実(仮定など無条件で受け入れるもの)であることと、そこから導かれるものであることをきっちり認識することが重要である。
- 難しい問題に出くわし、細かく分析しても解決の糸口が見つからないときは、具体的な問題を抽象化して大局を見ると本質がわかってくる(こともある)。
この本で述べられていることは、数学以外の研究、さらには研究以外の仕事にも参考になると思う。文章中には数学の話や例がちらほら出てくるが、それらの理解はこの本で広中氏が述べていることの理解とは無関係と思う。「創造」をしている人、したい人にはおすすめである。
学問の発見 数学者が語る「考えること・学ぶこと」 (ブルーバックス)
- 作者: 広中平祐
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/07/18
- メディア: 新書
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