僕は変分解析を勉強していた時期もあったので、幾何学を専門とされる著名な深谷賢治先生のお名前はもちろん存じ上げておりました。 先日、日本数学会のビデオアーカイブ*1を色々見ていたら、深谷先生の特別講演「ホモロジー的ミラー対称性の近況」の動画を発見しました。 全部ではないので少し見てみたところ、お考えが面白かったので、深谷先生が書かれた数学の啓蒙書(?)『数学者の視点』を読んでみました。
「数学」や「数学の研究」について言われがちな事柄の紹介と、それに関連する(歴史的)背景、そしてそれに対する著者自身の考えの短編集のような本でした。 巷で言われている素朴なことから、数学者の世界で言われていることまで扱われていました。
この本を読み数学者の端くれとしては、なぜ自分がこれまで数学研究をしてきたのか?今度どのような数学研究をしていきたいのか?など、今一度考えたい(考えるべきだ)と思いました。 また、目の前のやるべきことをこなす日々の中でも、時間を作りじっくり考えること、そして長期的な視点を持つ重要性を再認識しました。
すでに数学者になられている若い研究者や、数学者を目指したいと考えている学生などにおすすめの一冊だと思います。 一方で、数学が嫌いという方も読んでみると、数学に対する考え方が変わるかもしれません。*2
- 作者: 深谷賢治
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/01/22
- メディア: Kindle版
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*1:https://mathsoc.jp/videos/2016autumn/index.html
*2:この本の中に数式はほとんど出てきませんが、歴史的数学者の名前、定理の名前、概念の名前などはずっと出続けるので、このような方は読むこと自体がつらいかもしれませんが。