Funactional Mathematicianのブログ

数学(含む、統計学)で考えていることや、PC(特にMac)のTipsについてのメモの集合です。本blogに書かれている内容は、記事を書いた時点での僕の知識や調査によるものです。そのため、僕の不勉強による間違いや勘違いなどが書かれていることもあり得ます。記事の内容の真偽について、ご自身できちんと確かめて下さいますようよろしくお願いいたします。また、不適切な表現や間違えについては、ご指摘頂けると助かります。 (なお、記事の内容は、所属機関を代表するものではなく、僕個人の見解です。)

【読了】 『NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影』春日 真人(著)

ポアンカレ予想を証明したグリゴリー・ペレルマンについて、根気よく取材をし、その内容をまとめられた本です。

この本のまずスゴイと思ったことは、必ずしも数学が専門でない著者が、取材で得た数学的な内容(イメージ)をおおよそ理解され、わかりやすい言葉で説明しているところです。 特に、数学の非専門家に「ポアンカレ予想」とは、そもそも何を述べているのか?という点について、ロープが巻き取れるかどうかというイメージで伝えています。 (このイメージは、取材した数学者の1人から教えてもらったとのことですが。)

このように難解な数学を、イメージでわかりやすく説明する能力は、僕自身も身につけたいものです。 これができる人は、説明したい数学の事項を、相当深く理解できている人だと思います。

「なぜベレルマンがポアンカレ予想を証明できたのか?」という問いに対して、本書内で著者のご意見(著者なりの回答)がかかれておりますが、その回答も「難解な数学がイメージできる。」という部分に通じていると思います。 ただ、ペレリマンは(頭が良すぎて?)説明は、かなり難解だったようですが。

僕が本書を読んで印象に残ったことを、以下にメモしておこうと思いますφ(・
(一部、記載されていた言葉を利用させていただいています。)

  • 数学者は「難問に挑み続ける」一方で、ある意味で非常に楽観的でないと成功できない。
  • 数学について(他の学問でもそうだと思いますが)、答えそのものよりも、どうやって考えたかという過程が重要である。*1
  • 他人から言われた方法をやるのではなく、自分の直感に従うべきである。*2
  • 数学はかなり論理的な学問だけれども、論理的に考えて正しいとわかっても、自らの直感といしてわからない、わかったと思えない数学者もいる。((僕は完全にこのタイプです。)

本書を読んで、ベレルマンやその周りの人々について色々知ることができましたが、それ以上に自分の研究スタイルを振り返り、今一度考えるきっかけになった気がします。

NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影

NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影

*1:例えば2次方程式の解を求めることを考えると、解の公式を覚え解を求めることよりも、なぜ解の公式があのような形になっているのかを理解することが本質である、ということです。

*2:博士課程のときに当時のボスに「本を読んで勉強することは(もちろん)重要だが、読みすぎると先行研究の発想が邪魔して、自らの発想を新しく生む妨げになる。」といった内容のことを言われたことを思い出しました。数学研究において、先行研究をどれだけ読み込むかの塩梅は難しい。